オンライン英会話、伸びてるか分からない問題——半年ごとに同じ試験を受けることにした


オンライン英会話を続けている。予約の履歴は溜まっていくし、受けた回数も分かる。それなのに、いちばん知りたいことが分からない。

で、僕は伸びているのか?

レッスンの中では、講師は基本的に褒めてくれる。今日は調子が良かった気がする日もあれば、まったく言葉が出てこない日もある。でもそれは、その日の疲れや話題の相性の話であって、半年前の自分と比べてどうなのかは、誰も教えてくれない。回数は記録されるのに、到達度は誰も測っていない。

投資なら、これは絶対にやらない。積立の入金額だけ記録して評価額を見ない人はいない。なのに英語では、まさにそれを2年近くやっていた。


正確なスコアはいらない。欲しいのは差分だけ

そこで定点観測をつくった。設計方針は1行で、絶対スコアの正確さは要らない。毎回まったく同じ形式・同じ条件で測り、前回との差分だけを見る

これは時間を家計簿みたいにつけるときにも採った態度と同じだ。理想の計測をやろうとすると、たいてい重すぎて2回目がない。2回目がない計測は、差分が取れないので価値がゼロになる。だから「多少ざっくりでも、絶対に半年後もう一度できること」を最優先にした。

TOEICのような公式試験を受ける手もあるが、受験料と会場と半日が要る。それが理由で先延ばしになるくらいなら、精度は落としていい。所要20分、家でできる。この制約から逆算して4つのパートを決めた。

① スピーキング録音(いちばん大事)

固定のお題を1つ決めて、スマホのボイスメモに2〜3分しゃべる。辞書なし、原稿なし、即興。

Talk for 2–3 minutes in English about: your work and your family, what a normal weekday looks like for you, and one thing you want to improve in your life.

お題は毎回これを使い回す。話題を変えると、話しやすさの差なのか実力の差なのか分からなくなるからだ。同じ問いに、半年後の自分がどう答えるか。音源をそのまま残しておいて、次回は半年前の録音と並べて聴く。スコアより、これがいちばん効くと思っている。

② 語彙サイズ

無料のオンライン語彙推定テストを、毎回同じものを使う。数分で推定語彙数が出る。数字の絶対値には意味がなくても、同じテストなら増減は見える。

③ Can-do の自己評価

「自分の仕事の内容を詳しく説明できる」「相手の英語が速くても要点を聞き取れる」「知らない単語を別の言い方で言い換えられる」など8項目に、○(余裕)/△(なんとか)/×(無理)をつけるだけ。自己申告なので甘くなるが、同じ人が同じ項目に同じ甘さでつける限り、差分は残る

④ AIを試験官にする

最後に、AIと英語で4問の構造化された会話をして、CEFRの観点(流暢さ/語彙/文法/複雑さ)で採点してもらう。質問の中身も固定した。平日のルーティン/週末の過ごし方/FIREを目指す理由/生活で変えたいこと1つ。

人間の講師に毎回同じことをやってもらうのは難しい。講師が変わり、話題が流れ、比較条件が崩れる。AIなら、半年後にまったく同じ4問を、同じ採点基準で出せる。しかも無料で、何度でも。定点観測の相手として、これ以上向いている存在はない。

初回の結果:CEFR A2

さらしておく。2026年7月10日、初回の結果は**A2(B1に手が届きかけ)**だった。

観点判定
流暢さA2
語彙A2
文法A2
複雑さA2 → B1

A2は「基本的なやりとりができる」段階で、B1が「自分の意見を理由つきで述べられる」あたり。2年近くレッスンを受けてきた身としては、正直もう少し上にいると思っていた。

ただ、悪い話ばかりでもない。意味は100%伝わっていた。A2の合格ラインである「コミュニケーションが成立する」は達成できている。それに「複雑さ」だけがB1に片足を突っ込んでいるのは、聞かれたことに答えるだけでなく、自分から理由や意見を足しにいく癖がついているからだ。これはレッスンで身についたものだと思う。

いちばんの収穫は、点数ではなく「繰り返す間違い」のリスト

このやり方をやってみて分かったのは、総合スコアはほとんど役に立たないということだった。A2と言われて「そうか、A2か」以上の何かが起きるわけではない。

代わりに効いたのは、AIに出させた繰り返し出る誤りのリストのほうだ。

  1. 仮定法の主節で would が抜ける(“If I didn’t…, I play” と言ってしまう。正しくは “I would play”)— これが最頻出だった
  2. 冠詞と不可算の扱い(“a waste of time” / “have time” のあたり)
  3. 動詞の抜けと can’t のあとの形

自分では「文法はまあまあ分かっている」つもりだった。実際、書かせれば仮定法くらい間違えない。でもしゃべると would が消える。知識としては持っているのに、口から出る速度に間に合っていない。これは筆記のテストでは絶対に検出できない種類の欠陥で、しかもレッスン中に講師がいちいち指摘するには細かすぎる。

だから次回の見どころは、A2がB1になったかどうかではない。このリストの1番が減っているかどうかだ。半年後、would が口から出るようになっていれば、それは総合判定が変わらなくても前進だと言い切れる。

AIの採点は、褒め言葉のほうを割り引く

ひとつ注意していることがある。AIは、放っておくと励ましてくる。「よくできています、この調子で」と言われて悪い気はしないが、それを真に受けると定点観測が壊れる。

なので、点数そのものより指摘された誤りの具体例のほうを信用することにしている。「A2です」は解釈の余地があるが、「あなたはここで would を落としました」は事実だ。事実のリストは半年後と機械的に突き合わせられる。評価は動くが、誤りの記録は動かない。

起点を打っただけ

正直に書いておくと、初回の4パートのうち、語彙テストの数値とCan-doの記入はまだ埋まっていない。録音も撮ったきり並べて聴く相手がいない(比較対象がないので当然だ)。

つまり今回やったことは、測定ではなく、起点を打っただけである。この手の定点観測は初回に価値がなく、2回目で初めて意味が生まれる。それは分かったうえでやっている。

次は2027年1月。同じお題、同じ4問、同じテスト。そのとき初めて、この2年半のレッスン代が何を買ったのかが分かる。

記録メモ: 「続けているのに伸びている実感がない」というのは、たいてい実感が悪いのではなく、比較できる記録を残していないだけだった。体重も、資産も、時間も、測り始めた瞬間に扱いやすくなる。英語だけ measurable じゃないと思い込んでいたのは、ただ測る仕組みを作っていなかったからだ。

半年後にこの記事の続きを書く。A2のまま何も変わっていなかったとしても、それはそれで書く。