連載「家庭OS」 第6回 / 全13回

買ったあとを眺める道具——配当の着地予測と、ETFの中身を透かして見る診断


前回は「売らない前提で次の一手を決める」ナビの話だった。今回はその続きで、買ったあとの保有を眺めるための道具を2つ。配当の着地予測と、分散度の診断だ。


配当は「現株数×実績」で積み上げて予測する

配当の予測には、ざっくり2つのやり方がある。ひとつは「残高×想定利回り」で大づかみに出すマクロな方法。もうひとつは、保有している銘柄ごとに、いまの株数×実績の1株配当を積み上げるボトムアップの方法だ。

僕が日常で見ているのは後者。保有銘柄の最新の株数に、直近1年の配当実績から出した1株あたり配当を掛けて、今後12か月の受取配当を銘柄ごとに足し上げる。月別に展開すると、配当が四半期に集中する谷も見える。「来月は薄いな」「この四半期は厚いな」が事前にわかる。

地味に大事なのが、二重計上を避ける処理だ。同じ銘柄でも特定口座とNISAで別の行に分かれて記録されるので、銘柄と受渡日でいったん合算してから1株配当を出す。これをやらないと利回りが倍近くに膨らむ。実際に作って検証したら、予測と直近の実績のズレは1割強に収まって、ボトムアップが効いているのを確認できた。予測が過去実績をその1割ぶん上回っていたのは、買い増しで株数が増えたから。これは想定どおりの上振れだ。

ETFの中身を、原資産まで透かして見る

もうひとつが分散度の診断。これは作ってみて、いちばん「うわ」と思った道具だ。

インデックスのETFや投信を持っていると、「世界に広く分散している」つもりになる。でも中身を原資産まで透かして見ると、話が変わる。S&P500連動分を構成銘柄のウェイトで個別企業へ按分し、個別株やSPYDも実際の中身まで分解して、**「最終的にどの企業を、合計でいくら持っているのか」**を1つに足し合わせる。すべての円が必ずどれかの企業か債券に着地して、合計が総評価額にぴったり戻ることを検算してある。

透かしてみて分かったこと:

  • 巨大テック数社(いわゆるMag-7)だけで、総資産の12.7%を占めていた。 自分でテック株を選んで買った覚えはあまりないのに、コアのインデックス経由で大量に持っていた。
  • 特定の1社への集中も、思っていたより大きかった。
  • 別々のつもりで買っていた個別株とインデックスが、同じ企業を二重に保有している部分もあった。

(数字はある時点での診断結果。比率なので相場で多少動くが、「分散しているつもりが、実は1割以上を一握りのテックに賭けている」という構図そのものは、そう簡単には変わらない。)

「分散しているつもり」と「実際の集中度」は、こんなにずれる。これは保有額の円グラフを眺めているだけでは絶対に見えない。

眺めるだけ、で十分なこともある

この2つは、ナビと違って「次にこうしろ」とは言わない。配当がいつ入るか、自分が本当は何に集中しているか、を見えるようにするだけだ。

でも僕にとっては、それで十分なことが多い。Mag-7に思った以上に乗っているとわかれば、次の追加購入で意図せず上乗せしないよう気をつければいい。売って減らすのではなく、これから買う分で調整する——前回の「売らない」思想と、ここでもつながっている。

使っている技術

配当予測はボトムアップで、保有株数 ×(直近1年の配当実績から出した1株配当)を積むだけのPython。肝は前処理で、同じ銘柄が特定口座とNISAで別行に分かれるのを (銘柄, 受渡日) で合算してから1株配当を取る——ここを外すと利回りが倍に膨らむ。

分散度診断のほうが手が込んでいる。S&P500連動分は、運用会社が日次で公開している構成銘柄ファイル(holdingsのxlsx)のウェイトで個別企業へ按分し、個別株やSPYDも中身まで分解して、最後に全部を1社ごとに足し合わせる。ここで効くのが検算で、すべての円が必ずどれかの企業か債券に着地して、合計が総評価額にぴったり戻ることを確かめている(いわば保存則)。パースを間違えると合計がズレて落ちるので、この一致がそのまま「ちゃんと分解できた」の証明になる。

記録メモ: 投資で怖いのは、損そのものより「自分が何を持っているか分かっていない」状態だと思う。診断ツールは儲けを増やしてくれるわけではないが、自分の無自覚を減らしてくれる。それだけで、無茶な一手を打つ確率がずいぶん下がった。

家庭OSの型でいう「集計」のレイヤーが、お金まわりではこのあたりに当たる。次回は同じ家計の話でも、もっと日常的な「気づかず払い続けている定期課金」を洗い出す棚卸しの道具を書く。