連載「家庭OS」 第1回 / 全13回

家庭を「自作のOS」で回している——AIと一緒に小さな道具を作り続けた話


気づいたら、家のことを回すための小さな道具を何十個も作っていた。

子どもの一言を記録するもの、1日の時間の使い方を家計簿みたいに集計するもの、保有株を売らずに目標配分へ寄せる提案を出すもの、週末の過ごし方を1案だけ言い切って通知してくるもの——。どれも単体では「ちょっとした便利ツール」だが、並べてみると、これは家庭を回すための自分専用のOSになっていた。

この記事は、そのOSの全体像を一枚の地図として描くものだ。ここを起点に、これから1つずつ「なぜ作ったか・どう動いているか・AIに任せてどうだったか」を連載で書いていく。今日はその目次にあたる回。


はじまりは「自分の時間がない」だった

きっかけは大層なものではなく、単に余裕がなかったからだ。

子どもが2人、長女が3歳で長男が1歳。いちばん手のかかる時期で、自分のための時間はほとんど残らない。通勤や入浴みたいな「毎日必ず溶けていく時間」を眺めながら、ここを何とかできないかとずっと考えていた。

そこで方針を決めた。困りごとは、サブスクを増やすのではなく、自分専用の道具で解く。

理由は3つある。

  • 自分の生活に合う——既製のサービスは万人向けに作られていて、我が家の事情(子どもの年齢、住んでいる地域、投資の方針)にはどうしても余白が出る。自作なら最初から自分の形に合わせられる。
  • データが手元に残る——子どもの記録も家計も、一生もののデータだ。他人のサービスの仕様変更や値上げに人質を取られたくない。
  • 積み上がる——サブスクは払い続ける限りゼロから増えないが、道具は1つ作るたびに次が速くなる。

そして何より、作る作業そのものをAI(Claude)に任せられるようになったのが大きい。コードを一行ずつ書く時代なら、ここまでの数は絶対に作れなかった。「こういう困りごとを、こう解きたい」と相談すると、設計から実装まで一緒に進んでくれる。子育ての合間の細切れ時間でも、道具が1つずつ増えていった。

「家庭OS」という見方

個々のツールは驚くほど小さい。ほとんどが「1つのことだけやる」道具だ。

  • 子どもの「今しかない瞬間」を残す
  • その日の気分を一言で記録する
  • 1日の時間の使い方を集計する
  • 家族写真を自宅サーバーに集約する

それぞれは単機能でしかない。でも束ねると、家計・子育て・時間・健康という生活の主要な面を、薄く広く覆うレイヤーになる。OSが個々のアプリの下で目立たず全体を支えるのに似ている。だから僕はこれを「家庭OS」と呼んでいる。

派手な1個の万能アプリを作るより、小さくて壊れにくい道具をたくさん持つほうが、生活には合っていた。1つが壊れても全体は止まらないし、要らなくなったら捨てればいい。

共通の「型」がある

数を作るうちに、自分の道具にはだいたい同じ型があることに気づいた。

  1. 記録(ログ) — まず、流れていく事実を取りこぼさずに溜める。子どもの一言、気分、時間の使い方、健康の数値。
  2. 集計(ダッシュボード) — 溜まったものを、月次やカテゴリ別に意味のある形へまとめる。前月比や推移が見えると、はじめて「で、どうなのか」が分かる。
  3. 提案・通知 — そのうえで、こちらが動くべきタイミングだけ向こうから知らせてくれる。週末の過ごし方、来週のトレーニング、配分のズレ。

「記録 → 集計 → 提案」。この3段で考えると、新しい困りごとが来ても作るものの形が最初から見える。道具づくりの速度が上がったのは、AIのおかげ半分、この型が固まったおかげ半分だと思う。

家庭OSの地図

いま生活を支えている主なレイヤーを、ざっとカテゴリで並べておく。リンクのあるものはすでに記事にした回、ないものはこれから連載で書いていく予定の回だ。

💰 家計・投資

投資の判断ではなく、判断を支える材料を黙って用意してくれる役回りに徹している。

👧 子育て

⏳ 自分の時間

中心テーマの「自分の時間問題」は、まずここで時間を数字にして見えるようにするところから手をつけている。

🏥 健康

🗄 土台

正直な限界

きれいな話ばかりではない。当事者として、ちゃんと書いておきたい。

作ったけど却下したものもある。 たとえば少額枠でのスイングトレード基盤は、データも戦略も組んだうえで検証したら、ただ日経平均を持っているほうが成績が良かった。だから運用には乗せなかった。作ったものを「使わない」と決めるのも、同じくらい大事な結論だと思っている。

道具が増えると、道具のメンテが仕事になる。 自動で動くものが十数個もあると、どれかが静かに止まっていても気づけない。だから「動いているはずの道具がちゃんと動いているか」を毎朝チェックする監視役を別に立てている。OSにメンテ担当がいるのと同じだ。

全部を自作する必要はない。 これは思想というより線引きの話で、第三者のサービスやデータに自動でアクセスするような領域は、規約との兼ね合いがあるのでこの連載では扱わない。あくまで「自分の手元のデータを、自分のために整える」範囲の話として読んでほしい。

これは連載のはじまり

ここまでが家庭OSの全体像だ。次回からは、この地図のひとつずつに降りていく。

「なぜそれが必要だったのか」という生活の文脈と、「AIに任せたら実際どうだったか」という作る側の実感の、両方を書いていくつもりだ。便利ツールの紹介というより、子育て世代が自分の生活をどう設計し直せるかの、ひとつの実例として残していきたい。

まずは——いちばん効いている「時間を数字にする」話から書こうと思う。