痩せたのに心肺は戻らない — 健康データを「全部入り」で見て分かった矛盾


前に書いた通り、復職してから心肺系の指標がじわじわ落ちた。VO2Maxも安静時心拍も、育休中の方がずっと良かった。

あの記事を書いたあと、もっとちゃんと向き合おうと思って、Apple Healthに溜まっていたデータを 全部1枚のダッシュボードにまとめてみた。体重・体脂肪・血圧・心拍・ランニングフォーム……ぜんぶ並べて眺めた。

そうしたら、単一の指標を見ていたときには気づかなかった「矛盾」が見えてきた。

矛盾①:落ちたのは指標だけ。体はむしろ絞れていた

心肺の数字は落ちた。でも同じ期間、体重は一番軽くなっていた。3年で約8kg減。

問題は「その8kgの中身」だ。体重を 脂肪量除脂肪体重(筋肉・骨・水分) に分解してみた。

オレンジ(脂肪)は明確に右肩下がり、青(除脂肪)はほぼ横ばい。記録の通算で見ると 脂肪は約7kg減ったのに、除脂肪体重は0.8kgしか減っていなかった

つまり落ちたのはほぼ全部が脂肪で、筋肉はほぼ守れていた。減量としては理想的な「質」だった。ついでに血圧も収縮期で131→124まで下がっている。体そのものは、この3年で一番いい状態だ。

矛盾②:体は絞れたのに、心肺だけ戻らない

なのにVO2Max(心肺持久力の目安)は育休ピークの34台から戻らない。

育休中(2025年春〜秋)は34前後をキープしていたのに、復職後の2026年に入ってからずるずると30台前半まで落ち、いまも底のままだ。

並べてみると不思議な絵になる。体組成のグラフは右肩上がりに良くなっているのに、VO2Maxのグラフは右肩下がりに悪くなっている。同じ一人の体で、同じ期間に、指標が逆方向に動いている。

体重を絞ること(積み重ねが効く)と、有酸素能力を上げること(時間と強度が要る)は、別の話なんだと数字に教えられた。前者は復職後の生活でも続けられたが、後者は続かなかった。その差がこの2枚のグラフに出ている。

心肺が戻らない理由を掘ったら、ランの心拍が異常だった

なぜ走っているのにVO2Maxが上がらないのか。ランニング中の心拍を1回ずつ集計してみて、理由がわかった。

ラン中の平均心拍最大心拍が170超のラン
2025年172 bpm90%
2026年(直近90日)160 bpm

平均172というのは、走っている間ずっと閾値〜無酸素ゾーンにいるということ。毎回ほぼ全力疾走していたわけだ。これでは有酸素ベースが育たないどころか、体に負荷をかけ続けていた。

そこで意図的にペースを落として、心拍を上げすぎない走り方に切り替えた。その結果が直近90日で平均160 bpm、12 bpmの低下だ。

そして直近、ようやく反転の兆し

ペースを落とした効果なのか、自律神経の指標が戻ってきた。安静時心拍を最新まで延ばすとこうなる。

復職直後の2025年11月に83.9 bpmまで跳ね上がっていたのが、2026年6月は 69.9 bpm。育休中のベスト水準まで下がった。HRV(心拍変動)も同じ月に過去最高を記録している。

VO2Maxはまだ底のままだけど、これは反応が遅い指標なので、自律神経の回復に数ヶ月遅れてついてくるはず——と思って今は様子を見ている。焦って強度を上げると、せっかく下げたランの心拍がまた跳ねてしまう。

ついでに見つかった、いい話:走るほどフォームは整う

心拍の分析のついでに、ランニング中のフォームが「走り始めから終わりにかけてどう変化するか」も見てみた。普通は疲れてくると終盤にフォームが崩れる、と思っていた。

ところが逆だった。1回のラン(だいたい6km)の中で、終盤になるほど指標が良くなっていた。

  • 接地時間:310 → 295ms(短いほど効率的)
  • 上下動:12.1 → 11.5cm(小さいほど無駄がない)
  • ストライド:0.87 → 0.90m(歩幅が伸びる)

つまり走り出しで体が温まって、後半ほどフォームが整っていく。崩れるどころか、走るほど良くなっていた。終盤に上がるのは心拍だけ(これは生理的に当たり前のドリフト)。

落ち込む数字を探しに行ったはずなのに、こういう小さな「ちゃんとできている」が見つかるのも、全部並べてみたおかげだった。

これを毎月見るために、ダッシュボードを自作した

ここまでの分析は、16枚のグラフを1ページに詰め込んだ自作ダッシュボードでやった。体組成・血圧・ランフォーム・心拍効率・活動量カレンダー……ぜんぶ入っている。

Pythonのmatplotlibで全グラフを描いて、PNGをbase64で1枚のHTMLに丸ごと埋め込む方式にした。health_dashboard.html という単一ファイルで、ネットもサーバーもなしで開く。月初に自動で最新データに作り直している。

実物をそのまま置いておくので、よかったら触ってみてほしい。

👉 別タブで全画面表示作り方の技術的な話はこちら

ちなみに、作る前は「カレンダーの予定の多さと自律神経は相関するのでは?」と思って18ヶ月分の予定を引っ張ってきたが、相関はほぼゼロだった。仕事や通勤がカレンダーに入っていないので、そもそも「忙しさ」を測れていなかった。こういう ボツになった分析もそのまま残している。外れた仮説も、次に同じ罠にはまらないための財産だ。

まとめ:これもFIREの「コスト」なんだと思う

単一の指標だけ見ていたら「復職して体力が落ちた」で話が終わっていた。

でも全部並べると、もっと立体的な物語が見える。体は絞れ、血圧は下がり、心肺は一度落ちて、いままた戻りつつある。同じ期間に、指標ごとにまったく違う方向の変化が起きていた。

前に書いたけれど、自分は資産形成のために、健康というかたちでも毎月コストを払っている。通勤往復1時間40分と8時〜20時の労働が、有酸素能力を削っていく。その代わりに積み上がっていくのが、このブログの目標である資産だ。

ただ、こうしてデータを並べてみると、そのコストは「払いっぱなし」ではないとも思える。ペースを落とすという小さな打ち手で、安静時心拍は戻ってきた。全部が一方通行で削られているわけじゃない。下げられるところは下げられる。

数字は正直だ。でも、たくさん並べると少しだけ優しくもなる。落ち込んだ指標の隣に、ちゃんと伸びている指標があるのが見えるから。

VO2Maxが戻ってきたら、また続きを書きたい。